不動産評価差額を活用した非上場株式の相続対策における注意点
令和4年、最高裁判所において、不動産評価をめぐる
相続税総則6項の適用に関する否認事案がありました。
この事案では、相続開始前に借入をして投資用不動産を購入し、
財産評価基本通達に基づいて相続税申告を行ったところ、
不動産鑑定評価を用いるよう指摘されたものです。
このケースは個人が所有する財産についてのものでしたが、
近年では中小企業の株式評価においても総則6項の否認事案が増加しています。
このような状況の中、国側の主張がおかしいと判断されて国が敗訴した事例もあります。
一方で、相続税の節税スキームを活用した事案では、納税者が敗訴するケースも少なくありません。
私自身は、相続税対策として「節税」を強調する方法を推奨しているわけではありません。
しかし、最近では建築費の高騰や不動産融資の厳格化の影響もあり、
一部のハウスメーカーが法人向けに収益不動産を販売する傾向が見られます。
資産の組み換え目的で行われる場合には問題ありませんが、
相続税対策として行われているケースでは注意が必要です。
特に、節税を前面に押し出したスキームでは、
本来の趣旨から逸脱しているケースが多いと考えられます。
さらに、「評価減ができる」という表向きのメリットの裏側には、
「単に高額な不動産を購入しているだけ」というリスクが潜んでいます。
知識を持った方がリスクを十分に理解した上で行うなら問題ありませんが、
実際には知識不足の方が、同じく知識不足の販売者から
購入しているという実態があるようです。
これは過去のバブル時代を思い起こさせます。
当時、バブルだと気づいていた人は少なかったように、
現在の状況がどのようなものなのかを冷静に把握することが重要です。
慎重な判断と行動が求められるでしょう。
令和6年11月18日 税理士 髙島聖也