不動産建築を考える際は、さまざまな数字を見ながら計画を進めていきます。
建築時には、予算や収支計画といった数字にプレッシャーがかかりますが、
最近はその「数字の見比べ」をサポートさせていただく機会が増えています。
具体的には、複数のハウスメーカーや建設会社から提示された見積もりの内容を精査し、
金額の妥当性や、見積もり項目の漏れがないかをチェックしています。
「この項目が抜けているのではないか」「この費用は少し高いのではないか」といった視点で確認することで、
計画の精度を高めるお手伝いをしています。
この過程で、建設会社から「サブリース」の提案を受けることも少なくありません。
「空室リスクに備えるためにサブリース契約をしましょう」というものです。
確かに、賃貸物件において空室は大きなリスクです。
しかし、サブリースを含む各種のリスク対策を過剰に講じることで、
かえって不動産の収益性が低下してしまうケースもあります。
たとえば、必要以上のリスク回避を織り込んだ結果、家賃保証料や保険料などのコストがかさみ、
物件の利益率が下がるといったことです。リスクに対して慎重に備えることは大切ですが、
「リスクを回避するための対策」が新たなリスクを生む可能性もあるのです。
この考え方は、日本企業の経営にも共通します。
日本企業はかつての成長期を経て規模が拡大しましたが、
その一方で「チャレンジ精神」を失いつつあります。
現状維持を重視するあまり、新しいビジネスモデルの開発や新分野への挑戦を控えるケースが目立ちます。
しかし、変化の激しい現代において、チャレンジしないこと自体がリスクとなるのです。
不動産オーナーの皆様においても、同様の視点が求められます。
リスクに対するマネジメントはもちろん重要ですが、「備えすぎること」自体が
リスクを生む可能性があることを知っておく必要があります。
特に今は「物余り」の時代であり、さらにインフレが進行しているため、
時代の変化に柔軟に対応していく必要があります。
リスクをすべて避けるのではなく、「背負えるリスクは背負う」という姿勢も、
不動産経営においては重要な考え方だと思います。
経営とは、常に小さなチャレンジを続ける行為です。
建築時も、多少のリスクを取る姿勢を忘れずに進めていくべきではないでしょうか。
私自身、お客様に対しては税務面のアドバイスだけでなく、
こうした戦略面でのアドバイスも積極的に行っています。
戦略が失敗すれば、後の戦術ではカバーしきれません。
これは不動産建築においても同じで、建築の段階での失敗は、
その後の運営努力だけでは取り返しがつかない場合があります。
「不動産建築は経営の始まり」です。
事前の計画や戦略の立て方一つで、将来の経営の方向性が大きく変わります。
ですから、リスクをすべて避けるのではなく、取るべきリスクはしっかり見極め、
果敢に挑戦することが重要だと考えています。
令和6年12月19日 税理士 髙島聖也