家族信託の活用事例
不動産があり、相続後には処分しても構わないケース
相続対策を行う際、共有によるトラブルを避けるために、
できるだけお子さんたちに不動産が共有にならないよう、
遺言書の作成をお勧めしています。
例えば、相続人が長男と長女の2人で、相続財産が自宅のみの場合を考えてみましょう。
お子さんたちがこの自宅を共有で相続した場合、次のような問題が生じることがあります。
- 長女が自宅を売却したいと思っても、長男の同意がなければ売却できません。
- 長男が自宅を建て替えたいと思っても、長女の同意がなければ建て替えはできません。
このように、兄弟姉妹間での不動産の共有は、権利関係の調整が難しいため、
あまりお勧めできません。
しかし、財産が自宅しかない場合、通常の遺言書では「共有で相続させる」以外の
対策が難しいのが現実です。
この問題を解決する方法の一つが、**家族信託(民事信託)**の活用です。
家族信託を活用した具体例
- 委託者を不動産の所有者(今回は父)とし、
- 受託者を長男、
- 受益者を父、
とする信託契約を結びます。
この信託契約では、**受託者(長男)**が、相続後に不動産を自由に
処分できるように設定しておきます。
そして、父が亡くなった場合には、受益権を長男と長女が承継するようにします。
これにより、父の相続後には、
- 不動産の名義人である受託者(長男)が、不動産の処分をスムーズに行うことができ、
- 処分後の財産は受益者として長男と長女に分配されることになります。
このように、遺言書では対応できなかった共有による問題も、
家族信託を活用することで解決が可能です。
重要なポイント
家族信託を活用する際には、家族全員で将来の状況や不動産の扱いについて十分に話し合い、
情報を共有しておくことが大切です。これにより、後々のトラブルを防ぐことができます。
令和6年10月9日 税理士 高島聖也