税理士の髙島です。
先日、「顧問変更をお願いしたいのですが、料金を教えてください」
と新規の問合せがありました。
その際に、「記帳代行はお願いできますか?」
と質問がありましたので、
私「 記帳代行は、当事務所ではやっていないです。」
とお伝えしました。
「不動産オーナー専門でやっているのに、記帳代行はされていないんですね。
一般的に記帳代行をお願いしている不動産オーナーが多いいのではないですか」
と質問をされたので、
「はい、多いいと思います。だから、うまくいっていない不動産オーナーが多いですよ」
とお伝えし、当事務所がなぜ記帳代行をしないかということを説明しました。
帳簿というものを税金申告のための道具にするのか、
自社の経営状況を適切に把握し、将来の戦略を考える道具にするかは
自由ですが、今後成熟した不動産事業(人口減少が進む日本においては
衰退産業)を勝ち残っていくためには、まず数字を理解するという
足腰がしっかりしていないと経営は出来ないと思っています。
不動産専門で10年仕事をしてきてつくづく思うことは、
不動産オーナーの方は数字に弱く、また数字に強くなっていこうという方が
少ないということです。
これは税理士に問題があると思っています。
「帳簿付けは難しいから、私がしましょう」となってしまっています。
一方でうまくいっている方は、数字を理解しています。
例えば土地評価額に対して、どの程度の利回りがないといけないということを
理解して、土地活用を考えるのと、建設会社に言われた手取りを鵜呑みにして
建築を進めるのと、どちらが失敗しないかということを考えていただきたいのです。
例えば、資産額が多く将来の相続税率が50%、所得税率が高く50%の
税金を支払っている不動産オーナーの方がいたとします。
その方が、3億円の更地の活用を考えていたとします。
一般的には、相続税対策を前面に押し出した豪華なマンションや
アパートの提案が行われ、手取りが少ないケースが多くあります。
一方で、この土地を守っていく、維持していくための最低金額を
算出したとした場合に次のような計算式が成り立ちます。
①将来相続税額
3億円×50%=1憶5,000万円(将来相続税額)
②1年あたりの相続税積立額
1億5,000万円÷20年(将来相続までの期間)=750万円
③所得税控除前の必要手取額
750万円÷(1-50%(所得税率))=1,500万円
④必要利回り
1,500万円÷3億円=5%
→ つまり、評価に対して5%を上回る運用が出来て、
初めて、土地を維持することが出来る。
これ以下の運用の場合には、土地を手放すことが構造的に
決まってしまう。
どうでしょうか。上記の算式を基にご自身の土地活用が
うまくいっているかをぜひ検討してみてください。
このほかにも日々の帳簿をつけていると様々な気づきがあります。
ちょっとした数字の変化に気づき、改善をしていくということに
記帳の大切さがあると思います。
また、私の事務所では、記帳代行をしていないので、
自計化(自分で帳簿付けをすること)で顧問契約をさせていただいています。
この際に、クラウドの会計ソフトを導入しますので、当然にご高齢の
方では対応が出来ません。
できないと息子や娘に任せようということで、子供に頼むことになります。
すると今までは、自分の中で抱えていた不動産事業という課題を
自然と次の世代と共有することになりますので、事業承継が
進んでいくということが多くあります。
相続対策とは、相続が起きた時に問題ない状態にするということですから、
税金の問題だけでなく、相続が起きた時に事業をスムーズに承継していく
ということも対策になるので、これはおススメだと思っています。
長々と述べさせていただきましたが、帳簿は義務ではなく、権利だという
ことを、確定申告の時期だからこそお伝えさせていただきたいと思いました。
ぜひ参考にしていただければと思います。
令和6年3月7日 税理士 髙島聖也