税理士の髙島です。
今回は「インフレ時代を乗り切る不動産経営』という内容をお伝えしたいと思います。
円安や諸外国の戦争の影響から輸入物資の価格が高騰し、
30年続いたデフレが終わり、これからまさにインフレに突入してきます。
日銀総裁も変わり、金利上昇局面へと向かっていくでしょう。
このような時代変化の中で、不動産経営をされている方はどのくらい
危機感を持っているのかわかりませんが、私はかなり危機意識を持っていないと
先祖伝来の不動産を守っていくことは困難であると感じていますし、
それを勉強会等を通じてお伝えするようにしています。
なぜかというと、不動産経営は思っているほど利益が多く残るわけではない上に、
土地価格の上昇により将来相続税が増えているからです。
上昇幅の多いい方は5年で2倍になっています。
このような現状を踏まえると、早い段階で現状を認識し、
とれるべき手立てを考えて打つことが大切になります。
今回は、どのような現状分析の手法とどのような手立てを打つことが出来るのかを
お伝えします。
①現状分析(相続税)
現状分析の一番目は、将来相続税額の確認になります。
支払いが出来る相続税であれば問題ありませんが、手許資金に不足が
出る場合には、資金準備の手立てを考えます。
不動産活用に向く土地や建替が必要な不動産については、
相続発生前の活用を検討しましょう。
②現状分析(所有不動産の収益分析)
現状分析の2番目は、所有不動産の収益分析です。
毎年の確定申告は、所有不動産全体合計で計算しており、どんぶり勘定に
なっており、あまり役に立ちません。
各物件ごとに損益計算を行い、各物件ごとの収支や税負担を出しましょう。
この物件ごとの損益計算が問題点発見に非常に役立ちます。
当事務所では、物件ごとの1㎡当たりの収益及び費用を算出し、
問題点を見つけるようにしています。
また、今後物価が5%上昇した場合の試算や金利が10年で2%まで上昇
した場合の試算もすることにより、危機感を持つことが出来るとおもいます。
③改善策の検討
・相続税の負担を少なくする方法として、不動産建築があります。
不動産建築をする場合に、所有者要因をもとにどのような企画をすべきかが
変わってきます。
旧来の金融機関や建設営業マンは建てることで対策になることを全面に
押し出しますが、これは非常に危険です。
私も色々な方のコンサルティングを行ってきましたが、
不動産建築時に求められる収益性(利回り)を算出せずに建築しているので、
そのこと自体が足かせになっている不動産が多くあります。
いまはインフレ時代になっていますので、当然に建築費も高騰しています。
ただ、今後建築費が落ち着く見込みはありません。
ここで大切になるのは、どのように収支のバランスをとった建築をするのか
ということです。
失敗した不動産経営者の方の傾向として
「建設会社に言われるように建築した。私はそんなこと分からないもんな」
一方で成功されている不動産経営は
「無駄なものは省いてもらうようにお願いした。利回りは建築費に対して〇%になるように
企画をした。建設会社も信頼しているA社に決めていたが、念のためにB社にも見積をお願いした。
信頼できる管理会社のCさんにも近隣相場や建築費の単価などを確認した。」
このようにかなりの違いがあります。
・収益増加対策
現状分析をした結果、収支が求める利益性に満たない場合には、収益改善をしていく必要があります。
ここで注意いただきたいのは、経費の削減策も大切ですが、経営においては
収益増加が7割で経費削減が3割ということです。
収益をどうしたら増やすことが出来るかを考えてください。
その際には、まず近隣相場と比較して家賃が高いか低いかを算出してください。
もし、近隣より低い場合には、なぜ低くなっているのかの理由を考えいます。
多くの場合が、築年数が経過した時に、入居が決まらず家賃を下げた
というケースになります。
家賃を下げるのを最終手段として下げない対策を講じることが
不動産経営においては重要になります。
この時に、築年数が新しい有利な物件と築年数が古い物件によって
対策の取りようが変わってきます。
□築浅物件(競争力あり)→家賃見直しやサブリース解約
築浅物件の場合で競争力がある場合には、退去の都度値上げの検討をします。
最近建築中の物件は、高騰した土地や建築費を算出した家賃相場が設定されており、
家賃は上昇しています。
これらを踏まえると築年数が淡いうちは値上げということを積極的に検討すべきです。
また、築年数が新しく競争力がある物件でかつ、駅地下などの物件で
サブリース(一括借上)をしている物件は、サブリースを外した場合に、
賃料が増えないかを確認してください。
サブリースにはメリット・デメリットありますが、事業経営としては不向きです。
サラリーマンとして忙しくしている方や、物件が一つしかなく退去時の空室が
心配な方は除いて、一般管理の道を模索すべきでしょう。
□都心部の築古物件(競争力なし)→家賃アップ
不動産経営の難しいところは、新築時は競争力があり有利な立場で経営をしていたのに
築年数が古くなると物件の競争力が低下し、不利な立場に変わるということです。
不動産賃貸経営で大切なことは、立場によって変わる戦略の違いを理解し、
適切な対処を行うことではないでしょうか。
まず、博多区や中央区などで駅に徒歩10分圏内という築古物件についてですが、
これについては、リノベーションなどの工事により再び競争力を回復できないかを考えます。
この際に、リノベーションを実施した場合の投下資金の回収期間も算出し、
いくらまでリノベーション費用に充てることができるのかも検討しましょう。
この時に、市場規模が大きなエリアの中で、付加価値とは何かを考えることです。
家賃値上げを狙うわけですから、新築にはない付加価値を生み出す必要があります。
限りある資金を物件のどこに使うかや、理想とする入居者像を不動産経営者自身が
考えてください。
管理会社からの提案のみで判断するのは危険です。
それは、管理会社の担当者は、戦術担当で経営戦略、
特に競争の法則を理解している方はほとんどいないからです。
当然に、最近の入居者ニーズや家賃相場、設備の費用などの情報を聞き出すことは大切です。
一般的に「きれいにして、最新の設備を入れれば入居が決まる」
このような考え方を持っているのではないでしょうか。
これでは差別化は難しくなります。
築古物件で家賃を維持したり、高価格を狙うためには差別化が大切ですし、
費用対効果を上げるためにも差別化が大切になるのです。
□不利なエリアにある築古物件(競争力なし)→入居率改善
不利なエリアの築古物件は、相続税額の上昇幅があまり多くありません。
安い建築費で建設されているため、入居率が高い場合には問題ないケースが多くあります。
しかし、RCマンションなどで築30年経過したような場合には、設備も古く
退去があった場合には、設備交換をしなければ入居が決まらないことがあります
入居を決めていくための対策が必要になります。
まず一つ目の対策は、リフォーム工事費用を安く抑える方法です。
この時に知っておきたい情報は、建設業界や不動産管理業界の一般知識です。
例えば、管理会社を経由してリフォームを依頼した場合には、管理会社は
10%の利益をのせて、不動産オーナーに請求するようにしています。
つまり、10%割高になっているのです。
300万円の工事であれば、30万円は負担が多くなっているのです。
このこと自体は、当然に業務でしているので問題はないのですが、
この30万円に価値があるかを考えてください。
次に建設業界の常識ですが、建設業界は工事を受注し、下請けに業務を依頼することが出来ます。
このため、工事を請けた会社が自社では工事をせずに、下請けに丸投げ
しているケースも多くあるのです。
10%~20%は多く支払っているのではないでしょうか。
上記の事実を知ったうえで、出来る対策は、リフォームを自社施工で
出来る良心的な価格の会社に直接依頼することです。
リフォームを自社で施工する会社は小さい会社が多く、営業が苦手な
会社が中心になりますので、なかなか出会うことがないと思うのですが、
紹介などを通じて、探してみるのもいいでしょう。
ただ、注意をしていただきたのは、繁忙期などの入替の時期に、退去があり、
すぐに入居を決めたいなど時間的な制約がある場合には、管理会社との
連携がとれたリフォーム会社に依頼したほうが良いケースもあります。
④まとめ
以上、個人的な意見を述べさせていただきました。
時代変化に対応していくためには、まず現状分析をするということです。
そのためには、財務が非常に重要になると思っています。
今の財務状況が続くとした場合にどうなるかを予測することにより、
次なる打ち手が決まってきます。
ぜひ、今度の確定申告が出来上がりましたら、ご自身で物件別損益を確認して下さい。
また、最近は相続税の試算をしていなかったという方は、相続税試算を
税理士に依頼することをお勧めします。
R6.2.23 税理士 髙島聖也