日銀が金利を0.5%に引き上げるとの発表を行いました。
これにより、長らく続いた金融緩和の時代から「金利がある時代」へと
移り変わることが予測され、不動産業界にも大きな影響が及ぶと考えられます。
これまで低金利に支えられてきた不動産価格の上昇や、
新築投資が容易だった環境は徐々に変化していくでしょう。
こうした状況下で、不動産オーナーがいかに正しい戦略を打つかは非常に重要です。
適切な戦略を取れば事業の発展や安定を図ることができますが、
一方で誤った戦略は突然の危機を招く可能性があります。
そのため、自社の置かれた状況を冷静に見極め、正しい判断を下すことが必要不可欠です。
ここで、過去の教訓として参考になる事例をご紹介します。
リーマン・ブラザーズの失敗に学ぶ
リーマン・ブラザーズは、不動産担保証券(MBS)の取引を得意とし、
2002年から2006年にかけてウォール街で大いに活躍しました。
しかし、2006年以降、アメリカの住宅販売が頭打ちとなり、
住宅価格の上昇が止まるとともに、
FRBの金利引き上げがローン滞納や担保価値の低下を引き起こしました。
この局面で、当時のCEOであるリチャード・ファルド氏が取った戦略は
「引き続き市場シェアを拡大する」というものでした。
同社は成長ペースをさらに加速させるため、リスクの高い案件にも積極的に手を出し、
競合他社が撤退した案件にも進出しました。
しかし、この時点で同社の自己資本比率はわずか3%であり、
さらに資金の多くを超短期借入金で賄っていました。
このような状態での拡大戦略は、極めて危険な判断だったと言えます。
リーマン・ブラザーズはリスク低減を図るべきでしたが、
それを行わず無謀な拡大を続けた結果、158年の歴史に幕を閉じることとなりました。
この破綻は「リーマン・ショック」として世界中に深刻な影響を及ぼしました。
金利上昇時代における戦略の重要性
この事例が示すように、不動産市場においても
「自己資本比率」は金利変動に大きな影響を受けます。
低金利時代には自己資本比率が低いプレイヤーでも拡大を図ることが可能でしたが、
金利上昇局面では、多額の借入を伴う拡大戦略は非常に危険です。
そのため、不動産オーナーの皆さまには、
金利上昇という環境変化に対応した「正しい戦略」を持つことが求められます。
戦略を考える際には、自社の財務状況、特に自己資本比率を再確認し、
リスクの低減を図ることが必要です。
さらに、このような戦略的な視点は、
不動産営業担当者や事務的な役割を持つ営業マンではカバーしきれない場合があります。
不動産オーナー自身が戦略の重要性を理解し、学び続ける姿勢が不可欠です。
また、事業承継を考える場合にも、次世代のオーナーに対して「戦略」とは何かを教え、
共有していくことが必要でしょう。
金利上昇時代においては、これまで以上に慎重な経営判断が求められます。
未来を見据えた戦略を構築し、
自社の安全と発展を両立させる準備を進めていきましょう!
令和7年2月12日 税理士 髙島聖也