不動産専門の税理士をしていると、よく「先生は不動産賃貸をされていますか?」と聞かれることがあります。
そのたびに「いえ、賃貸経営はしていませんよ」と答えるのですが、実は厳密には不動産を所有しています。
それは自宅です。
6年ほど前に土地を購入し、自宅を建築しました。住宅ローンを組んで、自分自身に貸しているような感覚です。
「自宅を賃貸経営として考えたらどうなるだろう?」とイメージしてみることがあります。
長期のローンを組み、入居者(自分)に貸している状況です。
賃貸経営における空室リスクも、自分が退去しない限りありません。
修繕費が将来的に必要になるので、積立型の保険にも加入しています。
建てた建設会社に定期点検を依頼し、修繕の状況もチェックしています。
こうしてみると、不動産を所有する目的は**「家族が安心して暮らせる場所」「子どもたちが楽しく過ごせる空間」**
といった、非常にシンプルなものでした。
土地探しも妻と一緒に考え、「ここで暮らしたい」と思えるエリア**に巡り合えたからこそ、この家があるわけです。
自宅を「賃貸物件」として捉えてみると、不動産を持つことの意味や価値がより深く理解できます。
不動産賃貸経営の目的を明確にする
賃貸経営をされている方にアドバイスをする中で、「自分が物件を持つならどうするか?」と考えることがあります。
ただ、実際に物件を探してみると、なかなか思うようなものに出会えません。
物件を購入してフルローンを組んだ場合、手元に残る利益は物件価格の1%程度と言われています。
たとえば、1億円の物件を購入し、家賃収入からローン返済や税金を差し引いたら残るのは年間100万円ほどです。
これが一般的な数字です。
もちろん、自己資金を投入したり、収支バランスを調整したりすれば収益性を高めることはできます。
でも、そういう物件に出会うのは簡単ではありません。
仮に1億円の借入れをして物件を購入し、100万円の利益が出たとしても、
そこには金利上昇や修繕リスクがついて回ります。
「そのリスクを背負ってまで賃貸経営をする意味があるのか?」と、自分自身の中で疑問に思うこともあります。
私は税理士として仕事をしていますので、過度なリスクを抱えるのは避けたいという気持ちがあります。
不動産オーナーはなぜ賃貸経営をするのか?
では、私のお客様である不動産オーナーさんたちは、なぜ賃貸経営をしているのでしょうか?
その理由のひとつが**「土地の有効活用」**です。
先祖代々受け継いだ土地を守り、活用しながら収入を得る。
また、フルローンでの物件購入は相続対策や資産運用の一環として行われることが多いです。
このように、賃貸経営にはさまざまな目的があります。
ただし、どんな目的であっても共通しているのは、**「リスクに対応しなければならない」**ということです。
賃貸経営をする際には、「なぜこの事業をやるのか?」という目的をしっかり明確にしておく必要があります。
私自身、不動産オーナーの方々には
「収入を得るだけでなく、資産を守り、地域をより良くしながら自分自身も幸せに暮らすこと」
を目的にしてほしいと考えています。
いつかは不動産オーナーに?
私もいつか、**「自分が幸せになれる不動産」**に出会えたら、賃貸経営にチャレンジしてみたいと思っています。
ただ、それまでにはまだまだ学ぶことがたくさんあります。
今後もお客様と一緒に、不動産賃貸経営について勉強しながら、
**「本当に良い不動産とは何か?」**を考えていきたいです。
事務所でも定期的に勉強会を開催していますので、もしご興味があればぜひご参加ください。
皆さんと一緒に学べることを楽しみにしています。
令和7年1月29日 税理士 髙島聖也